世界中の社会の教科書に載るようなことが起こった2020年。
静かに愛でる四季を過ごし、こうしてクリスマスがやってきた。イエスの誕生を祝うこの日には、電気を消してロウソクを灯したくなる。
小さい頃に通った教会では、灯された蝋燭を持った人が一人、真っ暗な礼拝堂に入ってゆき、まず燭台の蝋燭に献火、そして静かに座っている一人ひとりが手にしている蝋燭に灯してゆく。明かりのないところに少しずつ暖かな光が増えてゆく、何かが始まるような雰囲気が僕はたまらなく好きだ。
そう、クリスマスには照らされて何かが動き出す。
動か静であれば静、内か外であれば内、そんな選択をして過ごしていた季節もあった。
秋ごろに、あるお仕事がきっかけで曲を作った。まだ熟してない葡萄を絞って仕込んだら、意外と美味しいワインができた、そんな感覚。
それ以降、動を選ぶ元気が出てきた。
野外に、屋根と椅子と、暖かい飲み物、そして音楽、そんな時間が一日の中にちょっとあったら良いなと思って始めた、よりみちライブ。来年も続けていきたい。
飢えが満たされて、渇きが潤えば人間は生きていられるだろう。
自分に与えられた命を生きるということは、何かを創り出したり、発したりすることだと思う。
人は言葉がなくとも表情や動きだけで表出してくるものがある。例えば三人で演奏してもぴたりと合うのは、それぞれの演奏技術だけでなく、相手の気を感じているからだ。
感じること、感受性、感性、こういうのが鍛えられて何かが生まれてくる。未熟でもいい、ぐっと絞れば何か出てくる。
音楽は生身の人間が、目の前で表現する芸術。
僕はこれまで観られて聴かれて育てられてきた。人の前でしか出ない音がある。その日にしか出ない音がある。
燃やしゆく命の温度を感じて欲しい。
無理せず、無茶せず。
クリスマス、暗闇にそっと灯した光が命を暖めますように。
2020年12月24日
内山和重